「ちゃんと写らない、だから驚く。」──青銅鏡の魅力とインスタレーション製作を聞く。

WEB 企画『コース賞受賞者インタビュー』#1

「ちゃんと写らない、だから驚く。」
──青銅鏡の魅力とインスタレーション製作を聞く。

第1回目は人間空間デザインコース・コース賞を受賞された、人間空間デザインコース4年 中津正樹さんにインタビューを行いました。「青銅鏡の魅力の考察とその特性を生かしたインスタレーション製作」について研究されている中津さんに、研究についてより詳しく深掘りしていきます!

研究のきっかけ

──早速インタビューをしていきたいのですが、研究のきっかけに現実の景色を直接見た際に何か違う不思議を感じたとおっしゃていらっしゃいましたが、具体的なエピソードはありますか?

一つが、青森県にある十和田美術館の…

──六角形のトンネルみたいなのですか?

そう、結構美術館自体結構凝ってる美術館なんですけど、それの企画展にAKI INOMATAさんの生きものと私が出会うときっていう展示を去年の1月頃見に行って、それとは直接は関係ないんですけど、それのショーケースとライトアップの関係で、鏡像がかなりこう複製されて無限に見える様子というのがかなり印象に残って。そうですね、ライトアップとアクリルケースの関係がかなり面白いなと思って、それが鏡に興味を持つ一つのきっかけにはなりましたね。鏡というか反射素材について。

まあ、単純にその出来事をきっかけに反射素材に対してあまりにも知らなすぎるなっていうのはあって、やっぱり性質とかあんまり知らなかったんで、それをまず、調べてから研究内容とか決めようかなと思いました。後、他に研究しようというものも興味を持っているものもそんなになかったので(笑)。それに加えて、実際に制作したいなと思って。アプリ上とかソフトウェア上で他のものではなく、「現実制作」、「リアルタイム」、「実空間」なんかで製作したいなって思い、そこから始めました。

青銅鏡の魅力とは

──ありがとうございます。青銅鏡って、今はあんまり使われていないというか、鏡として運用されてませんけど、反射素材としての青銅鏡の魅力ってなんですか?

反射素材としては、それは僕が製作に取り上げた形になるんですけど、普通の鏡は名称が「裏面鏡」っていう、ガラスに銀を貼って作られたよく見える鏡なんですよ。まあ、それに対して青銅鏡は、はっきり言ってしまえばあんまり見えないんですよ。鮮明に写らない鏡。だけど、人が見た時にはちゃんと鏡として認識できる。まあ、他の知らない人に見せても、「わぁー!鏡だー!」って驚いてくれるくらいの認識力があって。それが、そうですね、一つの魅力かなって思ってます。ちゃんと写らないことが青銅鏡の魅力ですね。

──ありがとうございます。青銅鏡の製作を実際に行ったと思うんですけども、その中での苦労とかってありますか。

まあ、それは、一番にかなり時間がかかるということですね。鏡にするまでにすごい時間かかるんですよね。手作業で表面をどんどん平らにしていくんですよ。ヤスリとかでひたすらに磨く。まあ、大体直径6cmの円の鏡を作ろうと思ったら、7時間はずっと鏡にヤスリをかけ続けなければいけないっていう、時間と労力の辛さがありましたね。

──なるほど。初めて青銅鏡を作った後の気持ちっていうのはどのようなものだったんですか?

初めては、ちゃんと上手く作れなかったんですよ。どんどん試行錯誤していって、結果的に鏡になって、一般的な鏡に近づいていくのが楽しかったです。初めてはなんじゃこりゃみたいなって思いました、全然出来なかったので(笑)。

青銅鏡×プロジェクションマッピング

──なるほどー!青銅鏡を使ったインスタレーション制作を行ったと思うんですけども、プロジェクションマッピングというのは、どこに注目して作りましたか?プロジェクションマッピングも意味合いを持って作られたと思うんですけど、プロジェクションマッピングの魅力とかありますか?

利点としては、プロジェクションマッピングは映像なので、基となる物体に何か情報にプラスして伝えられると考えたんですよ。今までの青銅鏡の文献とかは、ほぼ文章とか実物を展示するのはあまりなくて。実際に色が変わる、金属の比率によって色が変わるとか文献には書いてあるんですけど、実際に展示として見れるものはあんまり少ないかなと考えて、そこでプロジェクションマッピングを使って、より見やすく実感して、ぱっと見て直感で理解できるようなことが展示としては優れているなと思ったので、プロジェクションマッピングを使いました。

それに加えて、プロジェクションマッピングは光を当てるわけですよね。もちろんプロジェクターだから。で、光と鏡はかなり密接な関係があって、まあ光なきゃ鏡見えないし、っていう点でこう上手く利用できるかなって考えて、そうしました。

わたしが出会ったmeets me.

──実際見てもとても綺麗ですよね。それでは最後にこの研究を通して、あなたが出会ったmeet me.とはなんですか?

この研究だったら、最初は反射から始まったんで、「 Reflects 」meet me.ですね。

──反射が自分を変えてくれたって感じですか?

はい、まあ、より面白い知識を手に入れられたかなとは思います。

──これから今後どうしていきたいとかありますか?

今後は生きていきたいです笑、上手く、楽しく笑。それとやっぱり、いろんな人に多くのことを知ってもらいたいっていうのはありますね。青銅鏡でも何でも。知らないことなんていっぱいあるし。

──ありがとうございます。青銅鏡と研究の魅力がとても感じられました!中津さんの今後の活躍に期待しています。


第1回目のインタビューはいかがでしたでしょうか?さらなる青銅鏡への魅力を感じていただけますので、ぜひ中津さんの研究を合わせてご覧ください。

(筆:樋口涼佳子、八鍬百花)

yuyamikawa

投稿者: yuyamikawa

 筆者は、大学のゼミ活動などを通し、社会で様々な実践を繰り返してきた。それら基礎になっているのが実践者同士の対話であった。相互の見えを解釈した上で、見ていたものを想像、回想し、更なる解釈を語りあい、自他の経験、記憶、生きかたの違いを享受できていたのである。このような関係を形成するために、出会った人びと、触れた作品・デザインから得られる生きた物-語り〈ナラティブ〉を理解していたのだろう。 一方で、私たちデザイナーが現場にあった物-語りをどう解釈しようとし、現場の人々にどのように物-語られ、どのように受け取られていたのかなど、デザインにおける物-語りの構造を明らかにしてこなかった。  そこで本研究では、筆者のデザイン実践の物-語りと、 他者のデザイン実践の物-語りを省察的に読み解き、生活世界ベースのデザイン実践における物-語り=ナラティブはどのように紡がれ、その文脈を筆者や他者がどのように解釈をしていたのかを明らかにする。そして、そのナラティブを得ることでどのようなデザインができたのか、どのような知のはたらきがあったのかを明らかにする。自他の関わり合い、対話、デザイン活動の中で、活動段階による個々人の変化を捉えるために、二人称的アプローチによって実践を省察した。