「ビートボックスというツールを使って自分を最強人間にしていく」──ヒューマンビートボックスに関する研究を聞く。

WEB 企画『コース賞受賞者インタビュー』#2

「ビートボックスというツールを使って自分を最強人間にしていく」
──ヒューマンビートボックスに関する研究を聞く。

第2回目は人間空間デザインコース・コース賞を受賞された、人間空間デザインコース4年 川上勇太さんにインタビューを行いました。「ヒューマンビートボックスに関する研究」について研究されている川上さんに、研究についてより詳しく深掘りしていきます!

研究のきっかけ

──川上さんはヒューマンビートボックスの魅力に関する研究について医療との掛け合わせで研究してらっしゃいますが、何故この研究をやろうと思ったのか主なエピソードはありますか?

一年生のころにスタートアップ演習があって、看護学部の先生とデザイン学部の先生が各グループに1人ずつ付いた授業形式だったんですけど、その時の看護学部の先生が口腔ケアを中心に研究されている村松先生という方で。その方に僕が元々ヒューマンビートボクサーとして演奏活動をやっていたので、そういうことをしてるんですと話した時に、「面白そうだね。口を動かして音楽を奏でて、なんか口腔ケアとつながりそうだね。」と、教育だけでなく医療関係にも関わりそうだねといったことから、医療との掛け合わせで何かできないかという発想にいたりました。

ヒューマンビートボックスの魅力

──ありがとうございます。そのヒューマンビートボックスを川上さん自身元々やってらっしゃると思うんですけれども、ヒューマンビートボックスってどんな魅力がありますか?

この研究をして喋れることも多くなったんですけど、研究する前は演奏の手軽さや楽器が必要ないのもそうですし、尚且つ表現の幅が広いのも魅力かなと。あとやっぱり驚きですかね。自分が始めたきっかけでもある、衝撃的な「え、なにこれ?」という驚きが魅力なのかなと思います。

──研究をしていくうちに、この考え方は変わりましたか?

今まで考えていた魅力にプラスして、例えばこういうヒューマンビートボックス文化の背景から自分たち演奏者はこういう思考で生活しているんだとか、こういう音とか環境に敏感になって生活しているんだということがわかったりだとか、身体と精神でいえばどちらかというと精神的な自身の成長だとか発見を日々しているんだというところだとか。

驚きっていうところの魅力は、研究をした時に結構文化として重要だったり、驚きを人に与えたいとか与えられるようになるというところがやる魅力だとも気づきました。

──ありがとうございます。このヒューマンビートボックスをやってらっしゃる方々にヒアリング調査をしていたと思うんですけれども、その中で一番印象に残った話はありますか?

結構大体の人が口を揃えて言うのが「社交的になった」だとか、シンプルに言ってしまえば「自己肯定感が上がった」ような経験はしていることは皆さん言っていました。演奏のことというよりかは人との出会いが増えたみたいな。というのはこのビートボックスってそれこそ先程言ったように人に驚きを与えるんですね。で、驚きを与えるところから「え、何それ?」と自分に興味を持ってもらう武器ができたみたいなところでコミュニティが促進されるとか。

あとゲーム感覚なのもそうなんですけど、演奏するゲーム感覚の他に自分という人間に音というステータスとか武器みたいなものを新しくつけて自分自身をカスタマイズして人生の中でビートボックスというツールを使って自分を最強人間にしていくみたいな、人生を通してRPGをやっている感覚という意見を聞いて、自分も結構そういう感覚だなと思いました。

ヒューマンビートボックスの「やりかた」を伝える

──研究ではヒューマンビートボックスを音楽療法に活用していきたいとありましたが、具体的に今後どうしたいか展望はありますか?

結構実際に現場で検証しないとわからないので、今後大学院に進学するのでそこで進めていきたいというのもありますし、学部での研究は本当は具体的なコンテンツを決めてやっていきたかったんですけど、まだ研究分野が浅いので。

基本的なところからやっていく段階で、将来的にはどういう指導法がいいのか現場検証をしていきたいんですけど、その前にもっとこういう必要な研究があるよなということがたぶん出てくると思うので、そこを蔑ろにしないで基礎的なところから研究していきたい思っています。

──ありがとうございます。この模擬教材の制作にはどのように至ってやってみようと思ったんですか?

論文だと模擬教材を最後の方に制作した感じなんですけど、実は一番最初にやっていて。

元々教科書とかそういうのが無くて、教育分野でビートボックスの指導法を確立させようとしている先生がいるんですけどまだそこも研究初期段階で、今まで暗黙知のように伝えられてきただけなんですよね。YouTube等にアップロードされている講座動画や演奏動画見たりだとか、正式な指導法がなかったので一番最初に僕が考えうる指導法の中で、みんながどれがやりやすいのかなというのをまず確認しようということで3種類の教材をつくって。結果的に動画がわかりやすいよね、となったんですけど。

指導法というところを研究にしたかったので、動画を見せるだけじゃちょっと指導法だとかコミュニケーションが生まれにくいと思ったので、ちゃんと指導者がいることを前提としてプラスどういう教材があったらいいのかを考えていこうという流れになりました。

──第一人者になりうるかもしれないですね。

第一人者になりたいと思ってます!

わたしが出会ったmeets me.

──では最後に、あなたが4年間で出会ったものもしくはこの状況だからこそ出会ったものを教えてください。

「向上心」ですね。

──いい言葉ですね。何で「向上心」なんですか

僕自身が技術とかそういうものじゃなくて向上心があるということが魅力的だなとすごい思っていて、これに出会ったからここ4年間、いやもう市立大に来てからめっちゃよかったなって。実は思ってるんですけど。

いろんな環境とか人に出会ってその中で向上心がどんどん芽生えて、ビートボックスだけじゃなくていろんなことに熱心に向き合えるようになって。満足しない、手は抜かない、みたいな感じのことを出来るようになってきたので、やっぱこの向上心ってところが大きな出会いなのかなって思います。

──うんうん。これからも向上心を忘れずにですね!これでインタビューを終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。


第2回目いかがでしたでしょうか?川上さん自身のヒューマンビートボクサーと研究者としてもご活躍されるのが楽しみですね!また次回のインタビューでお会いしましょう!

(筆:樋口涼佳子、品川茂莉加)

yuyamikawa

投稿者: yuyamikawa

 筆者は、大学のゼミ活動などを通し、社会で様々な実践を繰り返してきた。それら基礎になっているのが実践者同士の対話であった。相互の見えを解釈した上で、見ていたものを想像、回想し、更なる解釈を語りあい、自他の経験、記憶、生きかたの違いを享受できていたのである。このような関係を形成するために、出会った人びと、触れた作品・デザインから得られる生きた物-語り〈ナラティブ〉を理解していたのだろう。 一方で、私たちデザイナーが現場にあった物-語りをどう解釈しようとし、現場の人々にどのように物-語られ、どのように受け取られていたのかなど、デザインにおける物-語りの構造を明らかにしてこなかった。  そこで本研究では、筆者のデザイン実践の物-語りと、 他者のデザイン実践の物-語りを省察的に読み解き、生活世界ベースのデザイン実践における物-語り=ナラティブはどのように紡がれ、その文脈を筆者や他者がどのように解釈をしていたのかを明らかにする。そして、そのナラティブを得ることでどのようなデザインができたのか、どのような知のはたらきがあったのかを明らかにする。自他の関わり合い、対話、デザイン活動の中で、活動段階による個々人の変化を捉えるために、二人称的アプローチによって実践を省察した。